【交通事故損害賠償の知識】債務不存在確認訴訟って知ってます? [交通事故]

交通事故の被害者になるとほとんどは交通事故が初めての方ですので、色々な面で沢山の不安を持つことになってしまいます。

事故当初は、治療費は払ってもらえるのか、会社を休んで減額された給料は払ってもらえるのか、後遺障害が残ったらどうするのか、キチンと慰謝料は払ってもらえるか等等、数え切れない疑問から不安になる事が多いと思います。

しばらくして、ある程度落ち着いてくると、今度は巷の噂に惑わされることになりますが、その中で一番不安な言葉が「弁護士」と「裁判」ではないでしょうか。



特に、追突事故でムチ打ち症になり通院をしているような場合で、レントゲンやMRIで異常はありませんと医師から言われているような人は、「医者から仮病と思われている」「このまま通院をすると裁判になる」など巷の間違った情報が沢山耳に入ってくると不安になってしまいます。



巷の噂の中で、もっとも不安になる言葉が「裁判」ではないかと思います。

債務不存在確認訴訟.jpg

でも、交通事故の被害者が不法行為を働いた加害者から訴えられる事などあるのでしょうか。



不条理ですが、実際にあります。

では、被害者が加害者から訴えられるとしたら、一体どのようなことで訴えられるのでしょう。



事故現場で加害者を殴ってしまったり、事故後に脅迫をしたような特殊な事例を除いては、通常は訴えられる事はないと考えられますが、例外的に本日のテーマの「債務不存在確認訴訟」を加害者の
代理人である損保会社から被害者に提起される事があります。


では、加害者が被害者に対して訴えを起す「債務不存在確認訴訟」とはどのような物でしょう。



法律的な面から詳しくお話をすると、とても長くなり逆に分かり難くなってしまいますので、簡単にお話をさせていただきますね。



「債務不存在確認訴訟」ですので、「債務の不存在」を「確認」するための「裁判」という事になりますが、この「債務の不存在」とは一体どのようなことでしょう。



簡単にいってしまうと、「加害者または加害者加入の保険会社には被害者に対して債務がない」という意味です。


ただ、全く債務がないという場合は少なく、今回の交通事故での損害賠償の支払い額は、例えば債務の上限が100万円であって、それ以上はないよという意味になります。


では、何故保険会社がそのような裁判を起すかとうことですが、概ね2つのケースがあると考えています。



まず、1つ目は、保険会社が保険金を払い渋るためのけん制措置として訴訟を提起する場合です。



何だか分かり難い表現になってしまいましたが、被害者の症状もだいぶ落ち着いた状況になってきて、そろそろ「症状固定」が近いなと思われる頃に、保険会社が被害者の大まかな損害を算出して提訴する場合です。



この被害者を放置すると、やがて症状固定した後、今回の事故の損害を地方位裁判所支払い基準で算出し、紛センや日弁連交通事故相談センターに持ち込んであっ旋を依頼するかもしれません。


そうすると、保険会社が考えていた支払い金額に比べかなり大きな金額になってしまいますので、被害者が損害を請求してくる前に保険会社の独自の算出基準で損害を算出し「債務不存在確認訴訟」
を提起してしまうという筋書きです。



この結果はどうなるかというと、多くの場合は被害者にとって、損をする可能性がかなり高くなります。

理由としては、第1回口頭弁論の指定日時までに被害者の正確な損害賠償額を算出する事が出来ない場合が多いからです。



例えば、通常であれば症状固定をして後遺障害の申請をし認定された等級により正確な総損害を算出する事になるのですが、「症状固定」をしていない時点でこの訴訟を提起されてしまうと、被害者側として正確かつ最大の損害額を提示できません。


訴訟を提起されて時点では、後遺障害等級が決まっていませんので、何級になるであろうという架空の根拠では請求が出来ないからです。

又、第1回口頭弁論の指定日時までに、現時点での後遺障害を除いた部分の正確な損害額が算出できなかった場合、保険会社が提示した金額を争っていくことになりますので、当然支払われる金額の上限は見えています。



「債務不存在確認訴訟」を提起されたら「損害賠償請求訴訟」をすぐ提起すれば良いとおっしゃる方もいますが、先程のように正確な損害が算出できない時点では、全く役に立ちません。



既に後遺障害等級などが決まっている時点では有効ですが、「症状固定」前ではどうしようもありません。


ただ、一昔前はこの様なことをする損保が多かったのですが、最近はコンプライアンスと良識の問題であまり見かけなくなりましたので、極端に神経質になる事はないと思います。



むしろ、示談金額で全く意見が食い違っているからといって、何年も保険会社にだらだらと勝手な金額を要求し続けているような場合、「債務不存在確認訴訟」と提起される可能性は高くなります。



保険会社はいつまでも案件が片付かないと、どんどん未解決案件が溜まってしまい業務に支障が出てきますので、「加害者は被害者に対して金○○万円以上の債務がないことを確認する」と裁判所に確認
の訴訟を提起する事になります。



ですので、キチンとした金額の根拠を示さずに、単に金額に納得がいかないだけの理由で示談を引き伸ばしていると、場合によってはほんとに「裁判」になることもありますのでご注意下さい。



又、被害者が最初から根拠のない高額賠償請求をしている、被害者が明らかに問題のある医療機関と結託して必要のない通院を繰り返している、被害者が保険会社に直接怒鳴り込む、○○組やそれに近い
反社会勢力やそれに順ずる人等の場合も、この確認訴訟を提起します。


この様なことをご理解いただければ、保険会社が脅しのために使う「弁護士」や「裁判」などという言葉により、不安になる必要など全くない事がお分かりいただけたと思います。



もしこの様な知識がない場合、保険会社から「弁護士」「裁判」などの言葉で不安感を煽られ、無理やり示談させられてしまうかも知れません。

被害者が納得できる理想の示談をするためには、被害者自身がキチンと学習をする必要があります。


被害者の最大の武器は知識です。







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コメント 2

neko

被害者家族です。
相手から債務不存在確認訴訟を起こされています。
上記の通り、症状固定前の段階でした。
相手からは治療費等の支払いはありません。
しかし、適切に被害者側が順序を守って損害賠償を
すれば問題ないとの認識です。
なぜ
「被害者にとって、損をする可能性がかなり高くなります。」
なのでしょうか? 相手が良識なく進めてきても
被害者側が適切に進めていけば良いと思います。。。
それは症状固定の前後や治療費の支払いの有無等に限らず
言える事で相手が勝手に債務不存在確認訴訟を起こしたと
しても落ち着いて業務的な手続きの為の症状固定に拘らず
痛みのある治療に専念して一つ一つ問題を解決に集中すること。
相手から債務不存在確認訴訟の訴状を出されたとしても
相手からの示談請求や脅迫めいた請求に応じない態度でいれば
損をする事は何もないと思います。
具体的に適切に被害者が進めても相手から訴状を出される事で
損をする事がありますか?ないと理解しているのでこちらの
記載が気になりコメントしてみました。
by neko (2011-11-24 12:19) 

ためいき

横レスですが、

>相手からは治療費等の支払いはありません

というのは、どういう理由からですか。事故はあったわけですよね。軽微事故なので、事故と怪我との因果関係を否定しているということなんでしょうか。
by ためいき (2011-12-02 00:23) 

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