AKBは「芸能界のリクルート」複雑な契約関係 [権利]

■雇用・委任・請負

 AKB48のメンバーは、それぞれ違う芸能事務所に所属していることをご存じだろうか。
 たとえば前田敦子や大島優子は太田プロダクション、板野友美はホリプロだ。一方、グループの活動を管理しているのはAKSという芸能事務所。はたしてAKB48のメンバーは、誰にどのような身分で雇われているのか。
AKBの契約推定図.jpg
 その内容は公表されていないが、芸能やスポーツの契約を数多く手掛ける高橋宏行弁護士は、「あくまで一般論」と前置きしたうえで次のように推測している。

「メンバーがAKSと出演契約を結び、ソロ活動については芸能事務所とマネジメント契約を結ぶという2本立て(図中1)の可能性もゼロではありません。ただ、一般的にマネジメント契約は独占性を伴うので2本立ては考えにくい。メンバーは芸能事務所と独占的に契約を結び、AKB48の活動のときだけAKSを通じて劇場に出演しているのかもしれません(図中2)」

 そうすると、メンバーは芸能事務所に雇用されているということになるのだろうか?

「民法には、労務を供給する契約として雇用、委任、請負の3形態が定められています。しかし、芸能界における芸能事務所とタレントとのマネジメント契約の内容は様々であり、民法の規定する雇用や委任、請負にストレートに当てはまらないことのほうが多いでしょう。また、そもそもきちんと契約書を交わしていないプロダクションもあります。AKB48のメンバーも、プロダクションと雇用関係にあるとは限りません」(高橋弁護士)

 雇用か、委任か、請負か。それぞれの違いを説明しよう。
 雇用契約では、被雇用者が使用者の指揮監督に従って仕事をする。働き方の自由度は低いが、労働基準法の適用を受けるため、労働者としての権利が保護される。

 委任契約や請負契約は、他者の指揮監督を受けずに自分の裁量で仕事ができるが、労働基準法は適用されない。委任と請負の違いは、契約の目的だ。委任は業務の処理を目的とし、請負は仕事の完成を目的とする。前者は弁護士や医者、後者はプログラマーなどが代表例になる。

 契約形態の違いは働き方の実態で決まる。
 たとえば書面で請負契約を結んでいても、実際は一般的な会社員と同じ働き方をしていれば、会社と雇用関係があったと判断されることがある。

「業務従事に対する許諾の自由がなかったり、勤務場所や時間を指定されていれば、雇用関係とみなされやすい。メンバーがどのような契約を結んでいるのか不明ですが、トラブルが起きて訴訟になれば、働き方の実態に即して判断されます」(高橋弁護士)

 ちなみにAKB48のメンバーは最初から現在の芸能事務所に所属していたわけではない。当初はoffice 48という芸能事務所に全員が所属していたが、人気が出始めた2007年以降、メンバーの多くが他事務所に移籍。現在も研究生時代はAKSに所属し、売れてきたら他事務所に移る流れになっている。

 スターの原石を育てあげたのに、他事務所に移籍させるのはもったいない気もするが、高橋弁護士は「移籍金が発生したり、活動に関してロイヤルティが発生する契約になっている可能性も否定はできません」と推測する。
 また雇用契約だった場合、会社はタレントを労働者として保護する必要がある。浮き沈みの激しい芸能界において同じタレントを長く抱えることは大きなリスクであり、移籍にはそのリスクを回避するメリットもある。

 オーディションで安く仕入れ、育成して高値で手放し、グループの新陳代謝を促す。野球やサッカーには同じような経営方針を持つクラブもあるし、ビジネスでいえば早期退職制度で転職や独立を促すリクルートがこれに近い。そう考えると、AKB48は案外、理にかなったビジネスモデルなのかもしれない。

 ただ彼女たちの給与の実態は「薄給」ということができる。
 今後なんらかのトラブルが生じた場合、この複雑な契約関係が足枷になる可能性も否定はできないだろう。


タグ:AKB48
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