【最高裁】個人事業主でも「労働組合法上の労働者」と判決 [裁判]

気になる判例が出てたので、まずは新聞記事を以下に引用します。

asahi.gif住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主は「労働組合法上の労働者」に当たるか。劇場側と個人として出演契約を結ぶ音楽家の場合はどうか。二つの訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は12日、いずれも「労働者に当たる」との判断を示した。

 企業が外注化を進め、個人事業主が急増する中で、判決は個人として働く人の権利を重視し、組合をつくって団体交渉する道を開いた。IT技術者やバイク便のドライバー、ピアノ教室や塾の講師など形式的には独立した事業主でも、働き方の実態によって労働者と認める先例となりそうだ。

 うち一つの訴訟を起こしたのは住宅設備会社「INAX」(現リクシル)の子会社「INAXメンテナンス」(IMT、愛知県常滑市)。製品の修理などを一定の資格をもつ「カスタマーエンジニア」(CE)に委託してきた。

 CEでつくる労働組合は2004年9月、労働条件を変える際には事前に協議することなどを同社に申し入れたが、拒否された。この対応を中央労働委員会が不当労働行為と認定し、団体交渉に応じるよう命じたため、同社が命令の取り消しを求めて提訴した。

 第三小法廷は、IMTがCEの担当地域を割り振って日常的に業務を委託していたことや、CEは業務の依頼を事実上断れなかった点を重視。「時間、場所の拘束を受け、独自の営業活動を行う余裕もなかった」として労働者に当たると結論づけた。

 09年4月の一審・東京地裁判決は労働者と認めたが、同年9月の二審・東京高裁判決は「業務の依頼を自由に断れ、いつ仕事をするかの裁量もあった」として労働者とは認めなかった。第三小法廷はこの二審判決を破棄し、IMT側敗訴の一審判決が確定した。IMTは今後、CE側との団体交渉に応じることになる。

 もう一つは新国立劇場(東京都渋谷区)のオペラ公演に出演する1年ごとの契約を結んでいた合唱団員をめぐる訴訟。ただし第三小法廷は、契約を更新しなかったことが不当労働行為かどうかをめぐり、審理を東京高裁に差し戻した。

 合唱団員の女性は1998年から5年間、毎年のオーディションに合格し、契約更新を続けた。しかし03年に不合格となり、女性が加入する労働組合が劇場側に団体交渉を申し入れたが、拒否された。
最高裁判所.jpg
 一、二審判決は「労働者に当たらない」と判断したが、第三小法廷は「女性は公演に不可欠なメンバーとして劇場に組み入れられており、事実上、出演を拒めなかった」と判断した。

          ■              ■

法律の解釈には書かれている「文言」から素直に読み取れる意味を明らかにする「文理解釈」と
その法律が作られた目的・趣旨を探る解釈方法があります。

通常、裁判などの争訟となった場合、裁判所はその法律が作られて趣旨にまでさかのぼって問題の解決にあたろうとします。

今回問題となった「労働者」。
企業は個人と契約になった場合、よく「業務依託」契約を結びます。

これには労働基準法、労働組合法などの個人が労働者として持つであろう権利を排除しようという意図が隠されています。

「労働者」とされた場合、契約先に対しては組合を作って条件などを交渉することができることになります。

また「ストライキ権」も行使して、業務拒否を適法に行えます。

上の事例ではそれを企業側が阻むために「業務委託契約」としていたんだと思います。

しかし、その実態は個人に場所的時間的自由はなく、仕事についての裁量がかなり制約されていたようだ。
こうなると、個人で営業しているのか雇われているのか区別がつきにくいことになります。

こういう実質を捉えて最高裁判所は、これらの個人を「労働者」と認定したんだと思います。

ただし、今回認められたのは「労働組合法上の」労働者の権利だけ。
労働基準法上の権利については判断されていません。

しかし、ビジネス界では実質は雇用されているのに、会社との契約は「業務依託」という例はたくさんあります。

労働基準法上の権利が認められると、労働時間や休日に関する権利、給料や解雇制限についての権利が行使できることになります。

今後はこういう実態に踏み込んだ判例がでてくることを期待します。


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