自転車のマナー悪化は見逃せない! [交通事故]

相次ぐ自転車事故を受け、警視庁は自転車について、原則、車道の左側を走行することを周知徹底させる方針を盛り込んだ「自転車安全対策」を作成する。

今年8月までに東京都内で起きた自転車が絡む事故は交通事故全体のおよそ4割と過去最悪に迫っており、警視庁は全国で初めての措置を取ることを決めたのである。
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警視庁は自転車ブームが高まった数年前から摘発強化に乗り出している。
昨年の取り締まり件数は信号無視が300件(前年比189件増)、ブレーキのない競技用自転車「ピスト」など制動装置不良が661件(同659件増)に上り、今年はさらに昨年を上回るペースだという。
一方、歩道での高速走行や一時停止違反の摘発はほとんどなく、警視庁幹部は「黙認と受け取られても仕方がない側面もあった」と話す。
今後は道路交通法の規定通り、子供や高齢者らを除き車道の左側を走るよう促し、走行可能な歩道を走る場合も安全徹底を求める方針とみられる。

震災後、急増した自転車事故
東日本大震災以降、通勤・通学に自転車を利用する人が増え、交通事故全体に占める自転車事故の割合も増加している。
警視庁は「震災後、交通網のマヒに伴う帰宅難民への不安から自転車通勤に切り替えた人が多かったのではないか」と分析しており、13日には自転車通勤を奨励する企業担当者らを集めた対策会議を開き、交通ルールの順守を呼びかける。

警視庁によると、今年3月~8月に起きた自転車通勤・通学中の事故件数は、前年同期より96件多い2129件。今年1月と2月は前年を下回ったが、3月を境に増加に転じ、4月は前年より56件多い400件。その後も増加傾向が続いている。事故の発生時刻は午前8時~10時が全体の約32%を占め、午前6時~8時が約20%でこれに続いた。
形態別では、信号無視や飛び出しにより、交差点で車やバイクと出合い頭に衝突するケースが目立ち、マナーを守れば防ぐことが出来る事故が多いといえる。


最近、ノーブレーキピストの問題など自転車のマナー悪化が社会問題となっている。車と異なり、自転車は免許もなく、運転開始の際の心理的な障壁も低いといえる。確かに自転車は小型であるが、自動車と同様に動く凶器となりうることを自覚すべきであると思う。

自転車事故を起こしてしまうと、民事責任として、被害者の治療費や入院費、休業補償などを負担し、後遺障害が残った場合は逸失利益や慰謝料の補償をしなければならない。また、死亡した場合は、葬儀費用や逸失利益の補償、慰謝料などを支払う義務が発生する。

さらに刑事責任として、自転車側の重大な過失により人を死傷させた場合、重過失致死傷(刑法第211条第1項後段)に問われる場合もあることを、改めて心に留めておきたい。

自動車事故の場合、賠償額がいくらになろうと一定程度は自賠責保険から支払われる。
自転車の場合、このような制度がないところから被害者と加害者の悲劇は始まるといえるだろう。
そろそろ、自転車にも何らかの制度設計に着手すべきときなのではないだろうか。



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社員が過労死した企業名の開示を拒否した大阪労働局 これが我が国のお役所の体質 [裁判]

 大阪地裁は10日、社員が過労死等により労災認定を受けた企業名の情報公開請求に対する大阪労働局の不開示決定につき、これを取り消す判決をした。
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 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)は、開示請求がなされた場合には原則として行政側に開示義務を課している(同法5条)。
 開示しなくてよいのは、同条各号所定の例外事由がある場合に限られる。
 本件における情報開示請求の対象は「法人に関する情報」であるため、同条2号イに定める除外事由にあたるか否かが争われた。

<参照条文> 情報公開法
第五条  行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
2号 法人(中略)に関する情報(中略)であって、次に掲げるもの。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。

判決はまず、個人の利益の侵害のおそれについては、企業名が開示されても、労災補償給付を申請した社員名などの具体的な情報を得られることはなく、個人を特定することはできないとした。
 また、法人の権利利益の侵害のおそれについては、開示により企業が取引先の信用を失うなど社会的信用を著しく低下させるおそれは、抽象的なものにすぎないとした。
 結論として、除外事由を否定し、不開示決定を取り消した。

 本件で特徴的だったのは、本来労働者の利益を守るべき労働局が、不当に企業寄りの態度をとったという点である。
 特に「企業名を開示すればその企業の社会的信用を損なう」というロジックは不可解としか言いようがなく、「風が吹けば桶屋が儲かる」と同値だといえる。

 覆い隠した末、後で明るみに出る方がよほどその会社の社会的信用にとってマイナスだとは考えていない。かなりの想像力欠如である。

 社員が過労死するなどということは、よほど労働環境・労働条件が劣悪だったということにほかならない。
 知っていて何ら改善せず放置するような企業は問題外である。しかし、仮にそうでなかったとしても、積極的に自らの過ちを認めて再発の防止に努めることこそが、長期的には社会的信用を得ることにつながる。
 そのようなことは、小学校の道徳の授業レベルの簡単なロジックである。

 近時、大王製紙やオリンパスのように、呆れるほどモラル・自浄作用が低い企業の存在が問題となっているが、過労死の問題も根は全く同じなのではないか。
 そして、巷間言われるようになってきた「ブラック企業」の存在が許されてしまっているのは、労働者に冷たく企業側に甘い役所側の体質にも大いに原因があるのでは、と思わせる事件である。


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【交通事故損害賠償の知識】交通事故で労災は使えるか? [交通事故]

今回は、通勤途中や仕事中の交通事故で受傷をした際、労災が使えるというお話です。


通勤途中の事故で怪我をしても、加害者の加入する任意保険が治療費や休業損害を補填してくれるので労災は使えないとか、任意保険会社が補填をしてくれるのであれば届ける必要もないと思っていらっしゃる方が結構多くいらっしゃいます。


ところが、場合によっては労災の届けをしておくことで治療の打ち切りの心配がなくなったり、後遺障害認定で有利になったりすることもあります。

又、合法的に通常の120%増しで休業損害金を受け取る方法もあります。


本日は、交通事故受傷と労災のそのような点についてお話をしたいと思います。



かつて相談者から時々次のようなご質問を受けたことがあります。

「事故から5ヵ月経ったけど、通勤途中だったので労災が使えるらしいと聞いたので、今から届けを出すことは出来るのでしょうか?」


「業務中の事故なのですが、加害者の加入する保険会社が全部払うと言っているので、会社から労災は使えないと言われましたが本当ですか?」

この様なご質問ですが、基本的には通勤途上や就業中の負傷であれば労災に届ける事になっています。

ただ、会社の労務担当者の知識不足などから、労災の届けを出すと保険料が上がったり、監査に入られたりすると思い込み届けを出さない場合が多いようです。

しかし、本当はそのような事はありませんので、具体的に労災についてお話をしていきます。


労災は労災保険のことですが、正式名称は「労働者災害補償保険」といいます。

労働者災害補償保険法が定められ、厚生労働省の管轄です。

労働者災害補償保険法の目的を条文で見てみましょう。


第1条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者

の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、

必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、

又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族

の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の

増進に寄与することを目的とする。




要約すると、雇用関係にある労働者が通勤途中や業務中に怪我したり死亡したりした時に支払われる保険です。


※交通事故の被害者で労災が認定される場合は、「第三者行為災害」です。



労災には以下のような給付があります。



◆ 療養(補償)給付

・療養の給付


業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合



・療養の費用の支給


業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合




◆ 休業(補償)給付


業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合




◆障害(補償)給付



・障害(補償)年金


業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合



・障害(補償)一時金


業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合



◆ 特別支給金


保険給付とは異なる支給金です。



支給金:休業特別支給金・障害特別支給金・障害特別年金・障害特別一時金



通勤途中や業務中の交通事故で受傷した場合は「第三者行為災害」として労災が認定されます。



交通事故で労災認定された場合、労災から支払われる物としては、治療費、休業損害、交通費など通常加害者が加入している任意保険から支払われる項目と同じです。



ここで、交通事故の加害者が支払うべき損害を何故労災が支払うのか、それはおかしいと思った方もいらっしゃると思います。



加害者もしくは加害者加入の保険会社(自賠責・任意)が本来支払いをするべき加害者の不法行為による損害ですので、その損害を労災が支払う義務も責任も全くありません。



ですので、交通事故に限らず被災害者が自らの不注意で怪我をしたのではなく第三者(他人)の不法行為により怪我をさせられた場合を「第三者行為災害」といい、通常の労災と区別しています。



例えば、交通事故でなくても通勤途中に工事現場の資材が頭上に落ちてきて怪我をさせられた場合などは、労災でいったんすべての費用を立て替えて被災害者に支給をし、労災で立て替えた費用(損害)は最後にまとめて加害者に請求し回収します。



この根拠は、労働者災害補償保険法第12条の4(第三者の行為による事故)で以下のように法的に定めれれています。



労働者災害補償保険法第12条の4

(1)

政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた

場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、

保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。



ですので、本来は被害者が加害者に対して治療費や休業損害の請求権を所有していますが、労災を使用した場合は被害者の持っている請求権を労災が代位取得することになりますので、労災に求償権が発生します。



そこで、労災は被害者に立て替えて支払った損害を加害者に対して請求することが出来ます。



何だか複雑だなとお感じになったかもしれませんが、支払い面に関しては通常の任意保険会社でも労災でも同じと考える事が出来ます。



おそらく、被害者の方も治療費の支払いもなく休業損害をもらう事が出来ればどちらでも良いと思うのではないでしょうか。



しかし、実は被害者の治療継続に関して重大な違いがあり、そのことを知っていて対応するのとしないのでは、後から大きな差が出てくることをほとんどの方がご存知ありません。



通勤途上や就業中に交通事故で受傷した場合、社長や事務担当者が労災の届けを出したがらない傾向にあります。


社長や労務担当者が労災にしたくない理由としては、「事業所で労災を使用すると、労災の保険料が高くなる」という思い込みがあるからです。


これは、労災を使用しない事業所の労災保険料は割引になり、特例を含めると最大45%ほど保険料が安くなるという労災保険のメリット制に深い関係があります。


社長や労務担当者は労災保険料の支払いが増えることを考え、社員に労災を使用させたくありません。

※ 事業所の常時雇用人数や事業種類によってはメリット制が適応にならない
  場合もあります。



ただ、交通事故は第三者行為によるもので、負傷の責任は加害者で事業所の安全管理ではありませんので、労災を使用してもメリット制に影響はありません。

しかし、そのことを知らない社長や労務担当が労災の届けを嫌がっています。


ただ、、労災は被害者とって色々な面で有利ですので、その誤解を良く説明して労災届けを出してもらうようにしなくてはなりません。


特に、被害者にも過失がある場合や大きな怪我で長期間通院しなくてはならないような場合、会社が何と言おうと労災にしたほうが絶対に有利になります。


「会社が労災にしてくれないから仕方がない」などと諦めてはいけません。


最終的な損得は被害者のみに生じ会社には全く関係ありませんので、労災の届を頑張って出すようにして下さい。


ただ、軽微な事故で治療も数週間で終るような場合は、あえて煩雑な労災にすることもないとは考えています。



通勤途中や就業中の事故であれば基本的には労災ですが、その辺りは臨機応変にご判断いただければと思います。



ところで、労災の届けを出して欲しいと会社に言っても、なんとしても出してくれない場合はどうしたらよいでしょう。

しょうがないから諦めますか?

実は、労災の届けは被害者自身で出来ます。


雇用されている会社を管轄する労働基準監督署に行き、通勤中か業務中かを労基署の人に伝え書類をもらい、必要事項を記載して提出するだけです。


また、労基署でもらった書類の中で「療養給付たる療養の給付請求書」のみを直接医療機関に持っていけば、病院で労災扱いにしてくれますので、その他の書類を後日労基署に届けても問題ありません。



ただ、何だか面倒だなと思われる方も多いのではないでしょうか。



しかし、労災にするかしないかでは被害者の治療継続に関して重大な違いがあり、そのことを知っていて対応するのとしないのでは天と地の差が出ることがりますので、次のことを良くお考えになって下さい。



もし労災ではなく通常の事故の場合はどうでしょう。

治療費や休業損害は加害者の加入する任意保険会社から支払われますが、どちらも任意保険会社の立て替えによる内払で法的拘束のない支払いです。



ですので、任意保険会社が立替を中止する、いわゆる「治療の打ち切り」をした場合、最終的には被害者本人が立て替えて治療を継続するか、治療を中止するかどちらかの選択になってしまいます。



しかし、労災では治療費はいったん労災が全て立て替え、治療が終了してから任意保険会社に請求しますので、途中で治療を中止しなくてはならない好況にはなりません。



安心して納得のいく治療をする事が出来ます。



さらに、休業損害も治療費と同様に労災から支払われますので、任意保険会社による休業損害の払い渋りもありません。



この様なことを知っているのと知らないのでは、治療の継続や休業損害の支払いに大きく影響し被害者自身に直接損得として降りかかってきますので、是非、今回のお話をご理解いただき有効にご活用ください。




被害者の最大の武器は知識です。



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コンプライアンスに熱心な管理職の隠された意図とは? [コンプライアンス]

コンプライアンスが重要だと言って、ルールや手続きを増やし、その厳格な運用を求める管理者の真の目的とは何なのか?

コンプライアンスが、現在の企業経営において重要な考え方であることは間違いない。しかしそれが、自分の最も大切な役割だと考え、様々なリスクを見出し、ルールや手続きやフォーマットを作り、メンバーにその正確な運用を強いるような管理職が多いのには首をかしげてしまう。

このタイプの管理職の多くは中高年であるが、そのコンプライアンスにかける熱意は、マネジャーに求められるそれ以外の仕事にかける熱意とは比較にならないほど強い。

彼らがそうする表向きの理由は、もちろん、コンプライアンスを重視した組織運営は管理者としての大切なミッションだ、ということなのだが、本音は全く違うだろうと思う。

中高年の管理者の多くは、企業内部における既得権者である。役職ポストを独占し、権限を持ち、給与水準は保証され、経営からはそれなりの存在価値を与えられている。彼らにとって困るのは、部下が自分より優秀であることが露見することである。あるいは、自分には理解できない創意工夫やイノベーションが起こることだ。

会社の規模的成長が望みにくい今、組織も処遇も仕事の仕方も何も変わらないほうが都合がよい。部下が活き活きと働き、成長し、その能力を存分に発揮することは、彼らにとって本音では(もしくは無意識下において)望ましい状態ではないのである。

そこで、コンプライアンスの出番となる。
ルールや手続きを増やし、その厳格な運用を求めれば、若手の自由な活動、付加価値時間を制限することができる。仕事上の工夫や変革、新しい知識や技術の導入などを提案されても、それによるリスクを見出すことさえできれば“コンプライアンス”を理由に却下することができる。

コンプライアンスという概念は、身の回りに変化が起こっては困る既得権者にとって、格好の道具となっているが実態だ。彼らは、自分の存在価値を低下させるような事態を防ぐために、能力的についていけないような変化が起こらないようにするために、「コンプライアンスが重要だ」と言っているのである。

コンプライアンスを「社会適合性」と理解する人が、徐々にではあるが増えてきている。
法令遵守というレベルではなく、顧客や市場や社会の要望を把握し、それに合わせ、遵うことがコンプライアンスだという考え方である。違法ではなくとも、社会からの期待や要望とずれたことをやれば企業のブランドに傷がつくという多くの例を見れば、このような理解の仕方は当然である。

そして、コンプライアンス=社会適合性と考えれば、速度を上げて大きく変わり行く社会に適合するためには、企業も変わらなければならないのは自然な流れであり、「内部的な変化なしに、コンプライアンスの実現もない」ことは容易に分ることだ。

このような理解は、既得権を持つ管理者達にとって実に不都合に違いない。
彼らは、コンプライアンスを、変化を起こさないための道具として使ってきているからだ。

コンプライアンスを大義名分に、法令や社内の規程やルールを守らせることにより、現場でイノベーションが起こらないようにしてきた。コンプライアンス=法令遵守でなければ困るのである。

コンプライアンス=社会適合性となってしまったら、いよいよ既得権が危うくなる。コンプライアンスを法令遵守に限定して理解し、その遂行に熱心な管理職には、若手はもちろん経営者も相当に気をつけるべきである。

コンプライアンスを単なる足かせにしてはならない。
こういう管理者等は「法律を守ればあとはなんでもいい」というスタンスになりがちになる。

これでは企業の創造的な活動と本末転倒ということになるであろう。


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那覇地裁 70代女性への生活保護支給命令 国に殺される? [裁判]

 8月17日、那覇地裁で、生活保護申請を却下された那覇市内在住の70代の女性が、却下決定の取り消しと生活保護受給を求めて那覇市に起こした義務付け訴訟で、裁判所は女性の請求を認め、義務付け命令を出した。
 
女性は年金を受給していたが、この年金を担保に貸付けを受ける制度を利用しており、年金受給者の生活保護利用は原則として認められていなかったため、市が貸付制度の利用をやめるよう指導していたが従わなかったので生活保護を廃止されていた。
 
判決では、「年金受給者の生活保護利用は原則認められないものの、生活が窮迫した状況にあるなど貸付制度の利用が社会通念上やむを得ない場合は、例外的に利用が認められること」に基づいて、女性の生活状況が生きる上で最低限必要な食事にも事欠く状況であり、窮迫していて利用も社会通念上やむを得ないとして、市に裁量権の逸脱・濫用があると判断し、却下決定は違法であるとした。
 
 年金担保貸付の利用を理由とした行政側の却下決定の取り消しを認めた判決は初。
 
 また、女性は2009年12月に却下決定の取り消し・生活保護再開を求めた仮の義務付け訴訟を起こしており、那覇地裁で勝訴した。
 仮の義務付けが認められたのは、2009年12月時点で全国初だった。

なぜ貸付制度を利用できないのか?

 生活保護受給者が年金担保貸付制度を利用できない根拠は、生活保護法4条にある。
 4条には、生活保護の受給要件として、「受給者は資産を最低限度の生活の維持のために活用しなくてはならない」と定められている。
 
 年金は老後の基礎的な生活費として支給されるものだが、これを担保に貸付を受けることは、本来生活のために活用できる資産があるにも関わらず、活用せずに生活保護を受けていることになるというのが、利用禁止の理由になっている。
   
 生活保護が税金を財源にしていることからしても、「財産隠し」のような貸付制度利用が禁止されるのは納得できる。
 ただ、今回の原告である女性は、年金を借金返済に回すと手元に数千円しか残らず、ライフラインが止められるおそれがあり、また糖尿病を患っていたので、治療を受けられないと死に至る可能性もあった。

 女性が70代という高齢であることからも、今回のケースでは、生活保護受給以外に女性を救う手段がなかったといえよう。

 今回のケースは特殊な事例だろうか。そうは思えない。
 
 もちろん、自分で老後の生活設計をきちんと立てておくべきであるし、設計されている高齢者も多いだろう。
 しかし、「あるべき」ことが必ずしも「ある」ものだとは限らない。

 また、ライフスタイルが多様化する中、年金を受給する年齢になっても働く方も大勢おられると思う。
 
 しかし地方では、生活が困窮状況にある高齢者は多い。若年者と異なり、働き口を探そうとしても見つからず、そもそも体力的に労働できない場合も多い。

 そのような高齢者が頼りにするのは公的保護制度になる。

 ところが貸付制度の利用が原則禁止されている現在の状況では、今回の原告の女性のように、返済できない借金を抱え、年金以外に担保がない場合、借金返済をしたいが生活保護を受けられなくなったら困るというジレンマを抱えることになる。
 
 例外事例が認められたとは言え、あくまで判決が個別ケースを救済したに過ぎず、制度としてカバーされたわけではない。
 
 今後、地方在住高齢者へのセーフティネットとして、生活設計の知識を身につけてもらう講座を開くなど公的保護に頼り切らないための予防策と、生活困窮者を救う制度の充実が求められる。


タグ:生活保護
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