塩谷瞬という男 結婚詐欺の温床? [新聞記事]

最近ワイドショーで話題の俳優・塩谷瞬。
いわゆる二股交際の話なのだが、このニュースを見て昔読んだ小説を思い出した。

乃南 アサのサスペンス「結婚詐欺師」である。
主人公の橋口雄一郎は40代のプロの結婚詐欺師。カツラ・洋服・職業・車を使い分けて変身して、女性の心理を逆手に取る巧みな話術で誘惑し、金をだまし取っていくというストーリー。

この橋口という男の実像は、薄毛でパットしない中年男だったので、意識的に装って女好みに自分を作る必要があったが、話題の塩谷君は素のままでいい男のようです。

この手の男性は特になにもせずに女受けがよく、これで少し話も上手なら勝手に女の方から靡いていく傾向があります。
そしてご本人も知らず知らずに女性に対して「根拠のない」自信が生まれ、いい加減な言動に走りがちになるんだと感じます。

そして今回、問題になるのは安易に「結婚」を話題にしたことにあります。

結婚の約束、いわゆる「婚約」は法律上も身分上の「契約」にあたり、その一方的な破棄や
履行不能は「契約違反」となり損害賠償の対象にもなります。

報道によると、塩谷君は「二股」どころではない状態のようですが、
この点、彼はあまり何も考えずに「結婚」を口説くための手段と考えていたようです。
http://hibikorekoujits.seesaa.net/article/267521844.html

しかし、もし相手の女性が塩谷の結婚話を真に受けて、具体的な結婚の準備に入っていた場合には
女性側の「期待権」を覆したものとして契約不履行にもなりうるし、もし何らかの金銭の授受があり
それを塩谷が返還しない、場合によっては「それは貰ったものだ」または「行方不明」になったといったように返還の意思がないことを表明したようなケースだと、それこそ「結婚詐欺」が問題になりえるでしょう。


これは何も芸能界だけの問題ではありません。
くりおねがまだ行政書士だったころ、「婚約者にお金を貸したが、引っ越して居場所がわからない」という30代の女性から相談を受けたことがあります。

貸したお金は200万。とにかく男の住所を特定しないといけないので、職権請求で「戸籍の附表」を取って、住民票の住所を探そうとしました。
住所そのものは見つからずじまいでしたが、その段階で、男は相談者の女性と知り合う前に結婚していたことが判明。
相談者も結婚をちらつかされて交際していたことを明かしたので、単なる金銭消費貸借の債務不履行ではなく、詐欺罪を構成すると考えたので「刑事告訴」へと動きました。

こういったことのないように、男性は不用意に覚悟もなく「結婚」話をしないように、女性は「どうせ結婚するんだし」といった考えで、安易にお金を貸さないようにしてください。



2分冊ですが、面白い小説なので機会があればぜひ読んでみてください。







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保険の嘘 CMの「月々たった○○円、一生涯にわたって…」は本当? [保険]

生命保険文化センターによると、1世帯あたりが年間に支払う保険料は平均45.4万円で、月々にして約3 万8000円。

これを30歳から60歳まで払い続けると、1300万円を超えることになる。最新の保険選びに精通する財務支援研究所の廣田貴史氏が、従来の「保険の常識」を疑い、この巨大な出費にアドバイスを送っている。

「保険料は月々たったの○○円で一生涯にわたって保障。しかも掛け捨てじゃない」などと宣伝する保険会社のテレビコマーシャルが目立つ。だが、一般に保険期間の長い終身医療保険は、定期医療保険よりも保険料は割高になる。しかし、そこまでして終身に加入することは必要なのだろうか。

現行の公的医療保険制度では、基本的に75歳までの医療費の自己負担は3割で、75歳以上は「後期高齢者医療制度」によって1割負担となる。また、医療費がかさめば、高額療養費制度もある。つまり、医療保険は3割負担である75歳までをカバーする定期で十分なのだ。

「終身医療保険で、高額な医療費に生涯を通じて備える」は、もう旧常識。
「75歳までの掛け捨ての定期保険にして保険料をカット」が新しい常識だといえる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


みつばち保険ファームは来店型の保険ショップです



☆黄色を基調とした親しみやすいデザインの店舗、オリジナルキャラクター、

揃いのユニフォームを着たスタッフがフレンドリーにお迎えいたします。

☆相談スタッフは、若いスタッフ・女性スタッフが多く、皆親しみやすくて、

おもてなしの心を持っているスタッフばかりです。

☆トータル保険コーディネート、複数社の保険見積り、保険証券の内容確認、

ライフプランシミュレーション、アフターサービスなど、保険に関することは

なんでもお気軽に無料でご相談できます。

☆取扱保険会社は生損保合わせて30社以上。豊富な保険商品の中から、最適な

アドバイスやご提案を行います。

☆ほとんどの店舗にキッズコーナーがあります。

キャラクターグッズ、折り紙、ぬりえ、玩具などが用意してあり、面談中は

店舗スタッフがお子様の相手をしますので、安心して話に集中できます。



【会社概要】
運営会社:株式会社VLフィナンシャル・パートナーズ

住所:〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-29-19 池袋KTビル

TEL:03-5953-2143 みつばち保険ファーム




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【交通事故損害賠償の知識】示談?訴訟?それとも・・・あっ旋? [交通事故]

ひさびさの交通事故テーマですが、きょうは解決の基本についてお話しようと思います。

事故で受傷してしばらく通院をし、症状も良くなったので治療を終了して、最終的な解決をする時のお話しです。


交通事故で死亡した遺族の場合や重大な後遺障害を残した場合を除き、普通は保険会社と話し合って示談することがスタンダードです。


本当に軽微な事故ではそれで問題ないのですが、後遺障害は残らなくても、通院期間が長くある程度の請求額になる案件では、保険会社と直接交渉すると損をすることもあります。


後からお話しをしますが、後遺障害が認定された場合は、地方裁判所支払い基準で解決するためのあっ旋機関を利用することで、受取れる損害額はかなり多くなります。


保険会社と直接交渉をして解決するか、その他の方法で解決をするか判断する目安としては、自賠責保険支払基準で算出した金額と地方裁判所支払基準で算出した金額との差がどの程度あるかになります。


自賠責保険支払基準と比べた理由は、任意保険が会社の提示してくる金額におおよそ近いからです。


ほとんどの場合、任意保険会社が独自の基準で計算をしましたとする数字は、限りなく自賠責保険支払基準に近いため、任意保険会社からの損害額計算書が来る前から予測できます。


考え方にもよりますが、自賠責基準と地裁基準とで計算した金額が数万円〜十数万円程度の差であれば、保険会社に慰謝料を多少上乗せしてもらい示談に応じた方が、費用対効果的には良いと考えます。


差額が少なくとも50万円以上あるような場合であれば、無料のあっ旋機関を利用して差額を請求することを視野に入れて行動しても良いと思いますが、お住まいの地域によっては交通費や宿泊費が発生し、50万円が適切な金額ではない場合もありますので、ケースバイケースです。


保険会社と話し合って示談をするか、無料のあっ旋を利用して和解をするかは、費用対効果の考え方に個人差がありますので、あくまで本人次第です。


被害者の請求額と保険会社の提示額の差が50万円以上ある場合、保険会社と直接交渉をしてもその差が劇的に縮まることはないと考えるのが一般的です。


保険会社と交渉をしても金額差が縮まらない場合、多くの方は裁判を思い浮かべることはできますが、先程出てきた無料のあっ旋を思い浮かべることはないと思います。



裁判は費用が掛かるので、逆に損をしてしまうかも知れないという憶測から、仕方なく保険会社が増額してくれた雀の涙ほどの金額で示談してしまう被害者さんが沢山います。


しかし、そのような時こそ無料のあっ旋機関を利用し、地方裁判所支払基準で解決を目指す賢い被害者にならなくてはいけません。


先ほどから何度も出てくる無料のあっ旋機関とは、交通事故紛争処理センター及び日弁連交通事故相談センターのことです。


加害者あるいは加害者の代理人(任意保険会社を含む)との示談交渉
がまとまらない場合、訴訟や調停で解決する方法もありますが、賢い
被害者は無料の和解あっ旋機関である、財団法人交通事故紛争処理
センターや日弁連交通事故相談センターの利用を利用します。


この二つの機関は、いずれも弁護士が無料で被害者の相談に応じてくれ、
中立の立場で保険会社と被害者の間に立って地方裁判所基準での和解の
あっ旋をしてくれます。


被害者にとってはありがたい存在です。


では先ず、交通事故紛争処理センター(以後 紛セン)からお話します。



■ 財)交通事故紛争処理センター http://www.jcstad.or.jp/


当センターは、事故に遭われた当事者の面接相談をとおして、弁護士や
法律の専門家による交通事故の相談・和解のあっ旋、審査を行います。


当事者間において、損害賠償などの問題について解決が図れないと
きに、公正・中立の立場で、無償で紛争解決するためのお手伝いを
する公益法人です。


紛センは全国の以下の場所に、1本部、7支部、2相談室があります。


東京本部 札幌支部 仙台支部 名古屋支部 大阪支部 広島支部 

高松支部 福岡支部 埼玉相談室 金沢相談室


紛センを利用する際には細かい制限がありますので、注意が必要です。


ごく普通の交通事故被害者であれば問題なく利用できますが、
以下の場合は紛センが利用できませんのでご注意下さい。


■ 自転車対歩行者・対自転車事故による損害賠償に関する紛争


紛争処理センターはあくまでも自動車事故により損保会社と被害者の間に発生した紛争を解決するところですので、自転車対歩行者、自転車対自転車のような損害賠償は、自賠責保険や任意保険とは異
なる賠償保険でなされるため、あっ旋することが出来ません。


■ 搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険など、相談者自身が契約している

 保険会社または共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争


これは、被害者自身が加入している傷害保険であり、加害者加入の保険会社との紛争ではありません。

ですので、被害者自身で解決をしなくてはいけませんが、傷害保険の性質上保険金額を争う事はできません。

■ 自賠責保険後遺障害の等級認定に関する紛争


自賠責調査事務所で決定する後遺障害等級についての争いは、損害の争い
ではありませんので、紛センでは解決できません。



■ 相手方が自動車保険(共済)契約をしていない場合


自動車保険に加入していないということは、加害者本人に損害を請求することになり、紛センの保険会社と被害者間の紛争を解決するという趣旨から外れてしまいます。


■ 相手方が契約している自動車保険(共済)に示談代行サービスがない場合



示談代行サービスがない場合は、保険会社は紛センに来て和解の協議をする
ことが出来ませんので、実質紛センでは解決できないということになります。




■ 相手方の共済が、JA共済連、全労済、交協連、全自共、共済連以外


JA共済連、全労済、交協連、全自共、共済連は紛センの裁定に従うと
していますが、その他の共済は従わないという誠に不条理な現実があります。


被害者は、加害者が加入する任意保険を選べませんので、運が悪いと
いうことになってしまうのですが、それにしても、同じような事故の
被害者で加害者の加入している保険によって損害賠償額に大きな差が
出てしまう現実には、何か釈然としないものがあります。




■ 損害賠償請求権者が治療中である場合


 ・治療は終了したが、後遺障害認定手続が未了の場合

  
 ・後遺障害認定等級手続に対する異議申立が未了の場合


 ・後遺障害等級認定手続について紛争処理機構に申立中の場合



後遺障害が確定していませんので、当然総損害額も確定していませ
んので、保険会社と損害賠償額で争いは生じていないとの解釈です。



民事訴訟における交通事故損害賠償請求は、総損害額が確定した
時点で債務を支払えばよい事になっていますが、任意保険会社は
任意一括対応をしている場合、総損害額が確定する前でもサービス
として被害者に立替払い、いわゆる内払をしています。



■ 訴訟または調停が行われている場合やセンター外で当事者間で示談が成立した場合


訴訟や調停が行われている場合や示談が成立している場合は、紛センでの解決は必要ないわけです。


■ 不正請求等不当な目的であっ旋手続等の申込みがされた場合


常識的なことですが、保険金詐欺に加担することはありません。



■ あっ旋手続等を受けようとする利用者(相談者)が権利または
  権限を有していない場合


これは、紛センの利用規定に「利用者等は、名目のいかんを問わず、
代理人弁護士以外の者をセンターの利用手続に参加させたり、同席
させるなど、関与させることはできない」とされていますので、
基本的には代理人として紛センに行くことはできません。


ただし、相談担当者または審査会が特に認めた場合は、この限りではありません。


以上のようなことに留意して利用すると、訴訟をした場合の80%〜90%
程度の損害賠償での解決が場合によっては可能となりますので、保険会社
の提示額と地裁基準での算出額に大きな開きがある場合はご利用になって
はと思います。


紛センでの損害賠償額を最大にする方法がありますが、紛センの規約により
紛センでの相談内容や個別の事案については、インターネットその他の方法
で公開を禁止されていますので、残念ながらお教えできません。

■ 日弁連交通事故相談センター


次に、紛センと同じように無料で被害者と加害者側の保険会社との間で、
和解をあっ旋してくれるところが日弁連の無料交通事故相談センターです。


日弁連交通事故相談センター http://www.n-tacc.or.jp/


日本弁護士連合会(日弁連)が、基本的人権の擁護と社会正義の実現を図る
ため、昭和42年、運輸大臣(当時)の許可を得て設立した財団法人です。



運営は弁護士が当たり、自動車事故に関する損害賠償問題の適正かつ迅速な
処理を促進し公共の福祉の増進に寄与することを目的として、現在、
全国148ケ所で相談を、35ヶ所では示談あっ旋および審査を、弁護士が無料で
行っています。




当交通事故相談センターは、国(国土交通省)からの補助金、日弁連、
弁護士会、弁護士、関係団体や寄付金などで運営されています。


こちらも、損害額を地方裁判所支払い基準で算定してくれます。


審査になった場合、JA共済、全労災、自治共済、生協は基本的には
審査結果に従うとされています。



■ 紛センと日弁連交通事故相談センターどちらを選ぶ?



では、実際に紛センと日弁連事故相談センターのどちらを選べば
よいかですが、保険会社への拘束力だけで選べばよいかというと、
そうでもありません。


なぜかと言うと、紛センは全国に本部、支部、相談室を合わせても
10ヶ所しかありませんので、相談まで予約から3ヶ月程度かかるのが
普通になっています。(キャンセルがでた場合は繰り上げもあります)


また、10ヶ所ということで全国各都道府県にあるわけでなく、
各地方に1つといった感じのため、被害者の住んでいるところに
よっては日帰りで相談に行くことが不可能な場合もあります。


それに比べ、日弁連交通事故相談センターは全国148ヶ所もありますので、
手軽に利用することができます。


裁定に従う保険会社の種類と所在地により柔軟に選ぶことが大切です。


以上のことを検討していただき、費用対効果を検証した後に、ご自身の体調も考慮し決定されてはと思います。


地裁基準での解決は、被害者にとって損害賠償額を最大にするための
切り札ですので、十分に学習されることをお勧めします。


被害者の最大の武器は知識です。



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労働契約法改正案 誰も幸せにしない法律再論 日経ビジネスより [コンプライアンス]

労働契約法改正案についての問題点については前の記事で既に述べた。

この問題をまた別の視点から河合 薫さんが「日経ビジネス」に書いてありましたので以下引用します。

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 「あ~あ、これでまた企業は逃げ道を探すことになるぞ」
 「規制すればするほど、働きづらくなるっていうのに、やめてほしいよ」
 「誰かを守るってことは、誰かを切らなきゃいけなくなるってことなのになぁ」

 思わずこんなふうにつぶやいてしまった人もいたのではないだろうか。

 そう。3月16日、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会が、小宮山洋子厚労相に答申した労働契約法改正案の要綱についてだ。同じ職場で5年を超えて働く有期契約のパートや契約社員について、本人が希望した場合に契約期間を限定しない「無期雇用」、すなわち、正社員に転換することが盛り込まれた。

 現在の労働契約法は有期雇用について、1回の契約で働ける年数を原則3年以内と定めているが、契約更新を重ねた場合の上限規定はない。それを改めて、新たに有期雇用の通算期間の上限を5年に設定し、それ以上は「正社員へ」との道筋を示したわけだ。

 ううむ。これってどうなのだろうか? 確かに正社員になれた方が安定するかもしれないけど、5年って、ちょっとばかり長くない?

 小学校の6年間は、とてつもなく長かったし、大学の4年間だって、そこそこ長かった。CA(客室乗務員)をやったのも4年間、夜のテレビ番組やったのも4年間、朝の番組やったのも4年間……。どれもこれも5年以下。大学院を修了するまでだって、かなり長い期間だったように記憶しているが、あれでやっと5年間だ。

 どう考えてみても、5年は長い。ん? だからこそ、「5年も契約したんだから、正社員にしちゃってよ」ということなのだろうか。

「働く人のため」の制度がかえって雇用を奪う矛盾

 いずれにしても、これまで政府が「働く人のため?」とばかりに制度で縛り付けることで、余計に働く人たちの「雇用」が奪われてしまったという現実もある。

 例えば、リーマンショックの後、連日メディアで取り上げられた「派遣切り」。その「派遣切り」を防ぐという名目で、製造業への派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案が2010年の通常国会に提出されたことがあった。

 ところが、「派遣社員」を守るためのルールであったにもかかわらず、派遣社員の労働市場は安定するどころか、「雇ってもらえない」ようになってしまった。多くの企業が派遣社員を減らし、パートやアルバイトを増やしたのだ。

 2009年で108万人だった派遣社員は、96万人にまで減少。一方、パートやアルバイトは、1153万人から1192万人に増加した。さらには、「派遣切り」と非難されることへの危惧が、円高や節電といったほかの要因以上に製造業の海外進出に拍車をかけているとの指摘もある。

 しかも、前述した要綱には、「無期契約に移行した場合でも、賃金や年金制度など雇用期間以外の条件は変更する必要がない」とされているのだ。

 つまりは、正社員になったとしても、もらえるおカネは増えないということになる。

 あれ? 非正規社員にとっては、「正社員よりも賃金が低い」などの、「雇用期間以外の条件」に関する問題の方が大きいと思うのだが、なぜ、それを「変更する必要がない」なんてわざわざ付記するのだろうか?

 まさか、「まぁ、細かいこと言わないでよ。正社員になれる、ってだけでいいジャン」というわけじゃないでしょうね?

 というわけで、今回は「働かせ方のルール」について、考えてみようと思う。

 「うちの会社では、以前は契約社員から正社員に転換できる制度はありませんでした。ですから、何回でも契約を続行することは可能でしたし、長い人では10年近く契約で働いていたんです。ところが一昨年に、3年たったら正社員に転換できるという制度ができましてね。最初は私も、その制度ができて良かったと思ったんですけど、実際には問題の方が多くなってしまったんです」

 こう語るのは、ある大手電機関連会社に勤める50代の管理職の男性である。

 この男性の会社では、「3年たったら正社員に転換できる」という制度ができたことで、現実には多くの契約社員が仕事を失うことになってしまったそうだ。実際には、会社はもっぱら「3年たったら正社員に転換できる」ではなく「4年以上は契約しない」という方針で制度を運用したからだという。

 つまり、それまではよほどの問題を起こさない限り、自動的に更新されていた単年度契約が更新されなくなった。2年目まではすんなりと行っても、3年目の更新の時のハードルがメチャクチャ上がり、一定の人数はそこで契約の解除を余儀なくされるようになったというのだ。

 「今までだったら雇い続けることができた人を、切らなくてはならないというのは、結構しんどい。契約だろうと、正社員だろうと、現場では、同じ働く仲間です。その仲間として一緒に働いている人と、契約社員だからという雇用形態の問題だけで、切るという行為が、実につらい。以前、人事にいた時には、“あんなの契約しなきゃいい”なんてことを、平気で口にしていたんですけど、実際に現場で一緒に働いていると、数値で示すことができない貢献をしてくれていることもあるんです」

 「毎日、一緒に働いていれば、その人の家庭の事情も分かってきます。自分が契約更新の判を押さなかったことで、その人の人生を変えてしまうのかと思うと、何だか申し訳なくて。すると、独身の人とか身軽な人ばかりを契約解除してしまったり、ホントにできる人を、『この人だったらよそでもやっていける』と契約解除したり。本末転倒です。こんなことだったら、いっそのこと前の方が良かったんじゃないかって思うこともあるんです」

50代の男性が語った胸中の苦悩

 数年前、人員削減が多くの会社で行われた時に、自分の部下たちをリストラしなくてはならない立場にいた人たちの苦しい胸の内を、何度も聞いたことがあった。それと同じ思いをこの男性も抱いていたのだ。

 もちろんこの問題は、「彼の問題」であって、制度やらルールやらの問題ではないのかもしれない。実際、3年目に正社員になった人たちにとっては、良い制度であるに違いない。でも、人間の気持ちは複雑である。ある人にとっては有益なルールが、ある人にとっては苦しみをもたらすこともある。

 制度さえなければ、何年も働き続けられた人たちが、制度ができたせいで働き続けられなくなってしまった。正社員にするという会社のルールに従うために、「切られる」人が生まれ、その上司は「切る」苦しみを味わわなくてはならなくなった。契約の解除は、現場のリーダーの一存に委ねられていることが多いのだ。

 特に、その契約社員たちが正社員たちよりも優秀な場合、余計に胸が締め付けられる。

 「契約の社員の人たちって、ものすごくよく働くんです。変な話、会社へのロイヤルティーも、仕事への責任感も、正社員よりもよほど高い」

 そんな言葉を幾度なく、契約社員を雇用している会社のリーダーたちから聞かされてきた。能力やパフォーマンスといった「個人の問題」ではなく、雇用形態という「会社の問題」でその人の人生を左右せざるを得ないことに、苦悩するのだ。

 契約社員として働いている人たちだって、同じだ。自分の能力に問題があるなら、何とかあきらめることができても、会社の都合となっては納得がいかない。「仕方がない」と必死に自分を納得させようとしたところで、なかなか受け入れられることではないはずだ。

 ただでさえ、「契約」というだけで、それまで散々煮え湯を飲まされてきたのだ。

・正社員よりも賃金が低い
・契約だと交通費が支給されない
・社員食堂でも契約には割引がない

 「なぜ、雇用形態が違うだけで、こんなにも待遇が違うのか?」という不満を抱えていたうえに、制度ができたことでそれまで自由に何年も契約更新できていたことができなくなったとなっては、元も子もない。

 そもそも「正社員」じゃ困るから、企業は「契約社員」にしているわけで。正社員化を義務付ける制度を作れば、ハッピーエンドってわけにはいかないのだ。

 当然ながら、契約社員たちにとって、将来への不安があるのは紛れもない事実だ。正社員になれれば、それに越したことはないだろう。だが、それ以上に、「今」への不満が深刻であることは、数々の調査結果から明らかである。

契約社員たちの真の不満と意外な希望

 厚労省の「有期労働契約に関する実態調査(個人調査)報告書(平成21年=2009年版)」によれば、正社員との賃金の差について、「かなり低い」との回答がトップで、48.0%だった。次いで「少し低い」が21.1%となっており、7割近くの契約社員が正社員よりも低い賃金で働いていることが分かる。

 賞与の有無についても、「賞与がある」としたのはわずか28.0%。しかも、85.6%が「正社員に比べて(金額が)少ない」と答えている。退職金の有無についても、「退職金がある」は10.2%で、75.9%が「正社員に比べて少ない」としているのだ。

 「でも、それって契約社員は、そもそも『責任』ってもんがないんだし、残業もないんだから、正社員と差があって当たり前だよ」。こう苦言を呈する人もいるかもしれない。

 だが、先の報告書によれば、「残業することがある」と57.7%が答え、平均残業時間の長さについても、「正社員と等しい」と52.1%が答えているのだ。

 52.1%を「やっぱ少ないでしょ」と捉えるか、「意外と多い」とするかは、人それぞれかもしれない。だが、契約だからといって残業が免除されるわけではないということだけは、この数字から明らかだろう。

 しかも大いに注目に値するのが、次の質問項目である。

 「契約期間が終了したのち、あなたはどうしたいですか?」

 この質問に対して何と50.9%の人が、「引き続き現在の職場で契約社員として働きたい」と答え、「現在の職場で正社員として働きたい」と答えた18.6%を、大きく上回っているのである。

 しかも、調査対象になった5000人の現在の通算勤続年数を見ると、「1年超~3年以内」が30.1%と最も多く、次いで「6カ月以内」が21.2%、「3年超~5年以内」が15.3%で、「5年以上」の人は20%しかいないのだ。

 おまけに、55.7%が「現在の仕事に満足している」と答え、「不満である」と答えた44.3%を10ポイント以上、上回った。

 さらに、「不満がある」と答えた人にその理由を尋ねたところ、トップは、「頑張ってもステップアップが見込めないから」(42.0%)、次いで「いつ解雇・雇止めされるかわからないから」(41.1%)、「賃金水準が正社員に比べて低いから」(39.9%)となっている。

 つまり、厚労省の作業部会が参考にしたという「契約社員の実態調査」から考えても、即座に改善が求められるのは、正社員との格差問題と言っても過言ではない。

 もちろん、「正社員として雇用してほしい」としている人も、22.1% いるので、正社員化を進めることには、異を唱えるつもりはない。でも、もし、「正社員としなくてはらない」というルールを作るのであれば、それと同じくらい「賃金格差」の改善にもプライオリティーを置かなくてはならないのだ。

 特に、「賃金格差」は人間関係をもいびつにする。

 「アイツは正社員のクセに、大して働いていない」
 「アイツは正社員のクセに、仕事ができない」
 「アイツは正社員なんだから、この仕事はアイツに押し付けてやろう」

 こうしたネガティブな感情は、慢性的なストレスとなり、不安感を高め、職務満足感を低下させていくのである。

働く人たちの意欲を保つために重要な「心理的契約」

 なぜ、「無期契約に移行した場合でも、賃金や年金制度など雇用期間以外の条件は変更する必要がない」なんて文言を追加する必要があるのか?

 そもそも現段階で「5年以上」働いている人が2割程度しかいない実態から考えれば、「5年」という制限はどんな意味を持つのか?

 何のためのルールなのか? 誰のためのルールなのか? 申し訳ないけど、私にはちっとも分からない。「3年以上は正社員化。賃金なども、すべて正社員と同等にすること」という法案であれば、納得できる。

 まさか……。何か、“裏”があるわけじゃあ、ないでしょうね?

 このルールを作ることで、甘い蜜を吸う人たちが“他”にいるんじゃないか、なんて。そんなことまで考えてしまうほど、訳の分からない改定なのだ。

 心理的契約――。

 これは、「組織によって具体化される、個人と組織の間の交換条件に関連した個人の信念」と定義され、働く人たちの働く意欲、つまりモチベーションを保つために、重要な要因と考えられているメカニズムの1つだ。

 「心理的」としている通り、法的な契約や職務契約とは異なり、あくまでも個人の認知に基づいたもので、多くの場合は、会社という目に見えない組織だけでなく、実際に日々関わる上司との関係性において構築されていく。

 例えば、「賃金、待遇」などは組織との関係性、「どんな仕事を任されるか、どれだけ上司から信頼されるか」は、上司との関係性に影響を受ける。

 そして、それらの条件が「自分にとって受け入れられる」ものであれば、個人は働く意欲を高め、職務満足感が高まっていく。心理的契約が高まると、次第に「この会社のために働きたい」と、会社へのロイヤルティーも高まっていくのだ。

 上司から仕事を認められたり、責任ある仕事を任されたり、正社員と分け隔てなく自分の存在価値を認められることで、上司との心理的契約は強められる。契約社員の方たちの実に6割近くの人たちが、「仕事に満足している」としていたのは、上司との心理的契約によるものだと考えることが可能なのだ。

 仕事へのモチベーションやパフォーマンスは、法的な契約よりも、むしろ心理的契約の度合いによって左右されると考えられているのである。

 しかも、いったん構築された心理的契約が破られることは、破る方にも、破られる方にも、土砂降りの雨となる。

 「パフォーマンスの高い仕事をすれば、契約を更新してもらえる」という思いから、120%の力を発揮すべき頑張っている契約社員の人たちも少なくない。そういう人たちにとって、契約を更新してもらえない理由が、自分のパフォーマンスによるものではなく、会社の都合ということになると、それは想像以上のストレスとなる。

 前述の「正社員への転換制度」ができたことで、苦悩する男性の場合も、一緒に働いている仲間への情だけでなく一緒に働くことで互いに交わされていた心理的契約を破ることにあった。そう考えることが十分できるのである。

 労働者の安定を守るためにという大義名分でルールを作るのであれば、本来、この心理的契約への影響も十分に考慮しなくてはならない。ところが、多くの政策や制度を決定する時には、アンケート調査などの量的調査をもとに行われることがほとんどだ。

 質的調査(個人にフォーカスし、その個人に語ってもらう手法)でしか測ることの難しい「心理的契約」は、完全に無視される。でも、本当に「契約社員のため」と思うのであれば、大変だろうと何だろうと、質的調査も行うべきだと思うのだ。

現場でホントに生かされるのは個人の生の声

 大学院にいる時に、臨床でドクターを経験していた先生が、「量的調査に基づく政策が、ちっとも現場では役に立たないと感じ、再び大学に戻った」と語ってくれたことがあった。

 「量的調査はね、結局は、その調査を行った人の仮説を検証するためのもの。質的調査は、個人的な意見で汎用性がないって非難する人が多いけれど、現場でホントに生かされるのは、そういう生の個人的な意見なんだよ」と。

 ルールや制度は必要である。でも、働く人のためのルールを作るのであれば、役人や大学の先生や知識人たちだけでなく、ホントに困っている人たちの「ナマの声」に、もっと耳を傾ける工夫も必要なんじゃないだろうか。

 それに……、人はルールで縛られれば縛られるほど、抜け道を探そうとする動物であることも、忘れてはならない。OECD (経済協力開発機構)の『Online OECD Employment database』によれば、労働者の雇用を保護する制度を強めれば強めるほど、失業期間が長くなる結果が示されているのだ。

 「新卒社会人の正規雇用の約3分の1が3年以内に辞める」時代に、「5年で正社員化」という法案が、悪い“逃げ口”にならなければいいと願うばかりである。

        ◇                 ◇



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