【ブラック企業】労働者の弱い立場につけこむ「腐れ外道」には記録残して対抗せよ [権利]

 厚生労働省が6月14日に発表した「平成23年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」によると、精神障害による労災請求件数が3年連続で過去最高の1272件。
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 3月に発表された、内閣府自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課による「平成23 年中における自殺の状況」でも、理由が「仕事疲れ」「職場の人間関係」といった「勤務問題」に起因する自殺者数は2689人を記録している。こうした形で発表される数字は、因果関係が明確なものに限られるケースが多く、データはあくまで“氷山の一角”である。

 それぞれのデータを世代別に見ると40~50代の数字が目立つのだが、深刻さを増しているのはワークルールや就労に関する法令知識に明るくない若者たち。労働相談ダイヤルを常設し、6月18・19日には「新社会人のための、全国一斉労働相談キャンペーン」を行なう日本労働組合総連合会(以下、連合)のアドバイザー・田島恵一さんに、最近の労働相談の傾向についてこう話している。

 「入社時に雇用ルールを明示していないことによるトラブルが多いです。明示していても、試用期間などを理由に『残業代は支払わない』といった法令違反を強要されることも。長時間のサービス残業が続き、その状況が“おかしい”と思っても、雇用環境が悪化している今の状況では“ようやく就職できたのだから”“辞めたら次が無い”と、会社側に改善してほしいと言えなかったり、がまんしてしまう。そうした労働者の弱い立場に、つけこむ状況は少なくありません」(田島さん)

長時間労働により健康を損なう、あるいはその前に限界を感じて若者が退職を申し出ても、会社側が退職手続きをしない、「辞めるのであれば、採用にかかった費用などを損害賠償請求する」と言って退職を認めてくれない、といった相談も多いという。

 「労働者には契約解除の権利があり、2週間前に告知すれば退職の自由があります。また横領や背任といった、故意によって会社に損害を負わせたケースを除いて、会社が労働者に損害賠償を請求することはできません。

 業務中の事故や備品の破損などを賠償させるケースがありますが、誓約書などで契約をしていたとしても、その契約自体が違法であり、労働者側に著しい過失があった場合でも全額を支払う義務はないんです」(田島さん)

 いわゆる“ブラック企業”を見分けるには、勤務時間や手当などを明記した雇用条件を書面で提示する、就業規則を明示するなどルールを明確にしてくれるかが、一定の目安になるという。
 しかしそうした契約自体に、労働者にとって不利な条件が記載されていて、知らずに契約してしまった場合に対応策はあるのか?

 「就業規則や個別の雇用契約は契約として有効ですが、労働時間や最低賃金など労働基準法に違反する内容については、すべて無効です。誤解が多いのですが、フレックスタイムや裁量労働制、年俸制であっても、規定時間を超えた残業に関しては割増賃金が発生します。

 勤務時間を管理せずに大量の業務を課して、『業務が終わらないのは処理能力の不足』として残業代を認めない場合でも、業務量から『黙示の指示があった』と労働者は主張できます。会社側には『安全配慮義務』があり、労働者がうつや病気になるような、過酷な働き方をさせてはいけないんです」(田島さん)

 連合のサイトには“職場環境に問題があるのでは?”と悩んだ時のための「ワークルールチェッカー」があり、診断結果ページには全都道府県の最寄りの相談窓口の連絡先が表示される。職場環境に“問題あり”とわかったら、電話などで具体的なアドバイスを受けることが可能だ。

 「長時間労働や残業代の不払いがある場合、出退勤を記録しましょう。タイムカードの打刻時間を定時内に強要される場合、業務のためにPCを起動・終了時に自分のアドレスに業務の“開始”“終了”をメールしたり、手帳に記録しておく。求人の時の募集要項・雇用契約書などの書面を保存するといった工夫をしておくと、実態と契約の間に隔たりがあったことがわかりやすい。残業代不払いの証明には、給与明細を保管しておくと、交渉の際の材料になります」(田島さん)
(この他にも自己記録型の勤務表のコピーを取っておくことも考えられます)

 会社側から解雇や退職勧告する場合に、退職理由を会社都合とせずに、自己都合退職を強いるケースも後を絶たない。

 「雇用助成金制度を利用している会社の場合、解雇者を出すと助成金が打ち切られるため、自己都合退職を迫ることが多いようです。会社と労働者が解雇についての話し合いをした後で、本来中立的な立場にあるべき社会保険労務士が自己都合退職を勧めた事案があり、これはかなり悪質なケースといえます。

 よくあるのは『経歴に傷がつくから、自己退職の方がいい』と説得された話ですが、会社都合であれば失業手当がすぐ支給され、国民健康保険料などでの優遇措置もあります。しかし、自己都合では失業手当の給付開始が3か月後になる、給付期間が短くなるなど、労働者にとって不利益になることもあるんです」(田島さん)

 また非正規雇用が増え、雇用形態の違いによるパワハラや待遇の不公平感が問題になることもある。

 「雇用形態が異なっても、基本的な権利などは法律上同じ。パートやアルバイトであっても、業務上の過失で罪に問われることもありますし、逆に残業代や有給休暇といった権利は、正社員同様に認められています。契約形態よりも業務の実態が優先されるので、最近増えている業務委託契約の場合でも、労働実態が雇用状態にあると判断されれば、契約は見直さなければなりません。景気や経営不振から『残業代が払えないと言われた』という話もあるのですが、会社が一方的に契約内容や待遇などを不利益変更することはできません」(田島さん)

 労働条件が過酷で、本人が冷静に考えることができない、第三者に相談する気力が起きないといった状況で、親や家族が相談するケースも増えている。子供や家族が、勤務問題を抱えているサインに気づくポイントを聞いたところ、以下の通り。

 ・早朝から出勤して、深夜まで帰宅しないなど、勤務時間が長そう

 ・休日がない

 ・顔色が悪くなってきた

 ・落ち込んでいる様子が見られる

 こうしたサインが見られたら、職場環境について話し合ってみる必要があるという。

 「お子さんの様子を親御さんから相談されたことをきっかけに、状況が改善された事例もあります。最終的には本人がアクションを起こすことが必要とはいえ、心配しているだけでは解決しないですから、ご家族からでもぜひ相談してもらいたいですね」と田島さんは言う。


 ※連合相談ダイヤル

 0120-154-052(フリーダイヤル・全国共通)

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